【読書感想文】『100歳、ずっと必要とされる人 ――現役100歳サラリーマンの幸せな生き方』を読みました。

100歳、ずっと必要とされる人 ――現役100歳サラリーマンの幸せな生き方
100歳、ずっと必要とされる人 ――現役100歳サラリーマンの幸せな生き方

人間は、働かないとボケます。マジです。

昨年、祖母を亡くした時に感じたのですが、人間は「自分の仕事」を失ったその時から、ズルズルと朽ち果てていくんじゃないでしょうか。祖母は亡くなる1週間前まで実家のすみずみまでモップをかけて、まだ働いている私の両親のために、細々とした家事をこなしてくれていました。亡くなる直前まで、ボケのボの字もなかったように思います。(一番近くにいた父に言わせれば、けっこうボケていたらしいですが)

別にお金を稼がなくてもいいんです。でも、誰かのための仕事はしないといけない。そう思いました。
で、この本を読みました。

誰かの役に立つ、という基本

100歳でも現役のサラリーマンを続けているこの方、福井福太郎さん。経歴はなかなか面白く、大学院生をやり、戦争を経験し、父親がやっていた家業を継ぎ、そして親友の求めに応じて証券会社の幹部になり、今(2013年現在)でも小さい会社でいちサラリーマンとして仕事をされているそうです。それも無理やり在籍しているわけでなく、「辞めないで欲しい」とお願いされて残っているということ。仕事も偉そうな管理職なんかではなく、他の社員と一緒に事務作業をこなす、本当にいちサラリーマンとして働かれている。マジっすか。

もちろん、かつて偉かったこともあり、お金に困ってやっているわけではありません。
他の人に必要とされているからやっているのです。

東京都内で働くいちサラリーマンとして、電車通勤して会社に向かい、仕事を終えて帰る。100歳でそんなことが可能だとは、夢にも思いませんでした。だって辛いじゃん、サラリーマン。つらいから辞めちゃったよ。雑貨屋さんになっちゃたっよ。なんか恥ずかしいよ。

福井さんはとにかく、「偉くなりたい」とか「なにかビッグなことを成し遂げたい」という自分本位な考え方がなく、「誰かの役にたつため」に働き続けていらっしゃいます。かつて証券会社にいた時も、親友(証券会社のボス)が「手を貸して欲しい」というので、何年も身を粉にして親友に尽くし、その結果として、なくてはならない人という評価を得ていたのです。
すごい。私もどっかの一般社団法人で「参謀」って呼ばれているけど、トップのために尽くしたいなんてかけらも思ったことがない。すごい。

福井さんが所属されている、今の小さい会社でもそう。100歳で働いているなんて、お飾りみたいな扱いでしょ?と思いきや、90歳を過ぎて「辞めたい」と申し出たところ、おもいっきり引き止められたので今でも現役なのです。誰かに必要とされる仕事をしているのです。信じられません。だって私が辞めるときなんて誰にも引き止められなかったし。いや本当に。

正しい人生の使い方

たぶん福井さんの生き方は、正しい人生の使い方といえるものなのではないでしょうか。たかだか29年しか生きていない若輩者として、今まで自分がどれほど自分本位な考え方で生きてきたかが身にしみました。自分だけが良い、という生き方では他の誰の役には立てないし、最後までひとりぼっちの悲しい人生の使い方になってしまいそうです。もしそんな生き方で人が集まってくるなら、それは自分のお金とかお金とかお金とか、なにかどうでもいいものに惹かれて集まってくるどうでもいい人たちなんでしょう。本当に必要とされる生き方というのは、たぶん地味で地道で、でも誰かの役に立っているものなんじゃないでしょうかたぶん。

ちなみに福井さんはこんなに健康なのに「健康の秘訣?そんなものないよ」と言っちゃうようなお茶目な方で、経済学や宗教観も面白い見方をされているので、本書は短いながらもとても楽しい読み物に仕上がっています。いや何かあるでしょ秘訣。ないの?そうですか…。

あと、随所に挿入されている優しげな福井さんの写真に娘(0歳)がやたら反応します。100歳も年上の男性は、さすがにお父さんどうかと思うぞ。

ザ・雑感

前々から、「定年退職」というものに疑問を持っていたんです。

定年になったら楽して暮らさせてやるぜ、だから馬車馬のように働こうぜ。働いているときはいいけれど、無事に定年を迎えたあとはどうするんでしょう。新しい人生の目標を、誰もが次々と発見できるものでしょうか。縁側でのんびり将棋でもさして生活するだけで、ハリのある人生を最後まで保てるでしょうか。もちろんそれが出来る人もいるのでしょうが、私にはちょっとむずかしい気がします。もちろん「死ぬまで働きたくねーよ」という考え方もあるでしょうし、私もそう思っていました(最近は遊んでるのか仕事してるのか曖昧だからよく分からない)。でももし、「死ぬまでやっていきたい仕事」が見つかったらどうでしょうか。

よくテレビで見る、同じものを何十年も作り続けている職人さんや、ものすごい年齢でも講演会や後輩の指導にひっぱりだこの先生。そういう人たちが、歳をとって早いうちからヨレヨレになっている、というのはあまり見たことがない気がします。※もちろん、例外はたくさんあるでしょうが。

仕事じゃなくてもいいですが、なにか一生続けられる目標、人生の楽しい宿題みたいなものを、見つけられるといいですね (私が)。
とりあえずは家族のために今日もご飯でも作るかなぁ(※注:私は80%ぐらい主夫)。主夫業って、一番近くの人に、一番手っ取り早く役に立てるいい仕事ですよね。