【読書感想文】『私の人生は「トイレ」から始まった!』を読みました


私の人生は「トイレ」から始まった!

最近は起業するとかしないとかいう話題を聞く機会が減ってきた気がします。就職せずに起業する、という選択肢が当たり前になってきたのか、それとも起業自体が流行らなくなってきたのか…

っというわけで、なんとなく読んでみたのがこちらの本。

「トイレの何でも屋」として起業した白倉正子さんという方の自伝。それってつまり、何をする仕事なの?という感じですが、どんな事業をしてお金を稼ぐかという点については、本人もさっぱりわからずにスタートしたそうです。大学を卒業するときに「自分は就職に向いてない」という理由で、しかもお金を稼ぐ目処もなく起業するというのは普通ではないですよね。しかもトイレ。若い女子なのにトイレ。謎すぎる。

修行から始める

どんな事業でお金を稼ぐのかすら決まっていないのに、白倉さんはまずお金にならない「トイレの修行」から始めます。具体的には、トイレ掃除の修行です。プロの清掃会社に頼み込んで教えを請うたり、ボランティアでトイレ掃除を通じて「トイレ修行」を行いました。もちろん仕事じゃないので、お金は稼げません。むしろお金を払っています(交通費とか)。最低限の生活費は両親からもらっていたようですが、基本的には極貧生活。パトロンがいる分だけ恵まれているとも言えますが、収入なしで修行を始めるという選択ができるという時点ですごいと思います。私には無理です。

なぜか仕事がくるように

トイレ修行を始めとした様々な活動を経て、白倉さんにはたくさんの仕事の依頼がくるようになります。白倉さんには「トイレをもっと良い空間にする」とか、「馬鹿にされがちな清掃員をかっこいい職業だと認知させる」という熱いポリシーがあり、それを常に発信し続けたので、沢山の人の共感を得ることができたのでしょう。
しかもこの人、トイレ修行を始めた直後は、びっくりするほどトイレの素人。それが来る日も来る日もトイレ漬けの生活をするうち、本当のトイレ専門家になっていったのです。しかも特別トイレが好きっていうわけでもなかったらしい。そんなに好きでもないのにここまで打ち込めるなんてすごい。すごすぎる。

なんでうまくいったのか?

どうして白倉さんのように、割と無茶なやり方で(失礼)うまくいったのでしょうか。私が考える要因はこんなかんじです。

1.うまくいくまでやった
貧乏だろうが不安だろうが、うまくいくまでトコトン続けたことが一因でしょう。

2.他にやっている人がいなかった
「トイレの専門家」を個人でやっている人はあまりいなそうです。便器を作っているメーカーなんかにはいそうですが、組織に属さずに「トイレの専門家」として起業する人は極めて珍しいでしょう。他にやっている人がいなければ、確実にその分野の1位になれます。素晴らしい目のつけどころです。

3.とにかく打ち込んだ、積極的に投資した
部屋がトイレグッズやトイレの資料で埋まり、夢のなかでもトイレが出てくる。お金はないけど、トイレのイベントのために海外まで行ってくる。どっぷりとその分野に浸かり、そしてお金はなくても投資しつづける。トイレに対する積極的で迷いのない行動が、誰もが認めるトイレの専門家を産んだのでしょう。

普通だったら数年の間に「うまくいかない」「やめちゃおうか」「就職したほうが絶対に楽だ」といろんな思いが交錯して、実際に途中でやめてしまうでしょう。※特に収入がない不安感は、人を簡単に挫折させます。マジで。今でも私の雑貨屋が存在しているのは一種の奇跡。マジで。
その不安感と闘いながら、自分のやりたいことに打ち込んだ結果としてうまくいった…というか、うまくいくまで続けた。それが著者のすごいところであり、成功の秘訣なんでしょうね。

ちなみに

白倉さんはご結婚されてお子さんもいらっしゃいます。やっぱり何かに打ち込んでいる女性というのは魅力的なので、極貧でもクソ忙しくても、結婚したがる男性がいるってことなんでしょうか。それはともかく、子供の名前を大便器にちなんで「大輝(ダイキ)」くんと命名するあたり、すごすぎると思いました。白倉さん以外がやったら虐待を疑われそうです。小学校の宿題で、自分の名前の由来を調べてみんなの前で発表するようなことがないようお祈り申し上げます。※白倉さんの経歴を思えば、とっても愛情のこもった名前だってことはすぐにわかるんですけどね…