【読書感想文】『記憶をコントロールする――分子脳科学の挑戦』を読みました

記憶をコントロールする――分子脳科学の挑戦 (岩波科学ライブラリー)
記憶をコントロールする――分子脳科学の挑戦 (岩波科学ライブラリー)

30を間近に控えて、物覚えが悪くなってきた気がします。
気がしますっていうか悪くなりました。昨日の晩ご飯がギリギリです。本を読んでブログに感想まで書いてるのに、何の本を読んだのか3日で忘れます。ギリギリです。

っというわけで読んでみたのがこちらの本。

最新の脳科学をわかりやすく、超わかりやすく

本書は、人間の記憶と脳に関する研究を、私のようなド素人ニセ文系野郎にもわかるように噛み砕いて噛み砕いて噛み砕いて説明してくださっています。たぶん本当は、私が読んでも1ミリも理解できないような難解な内容を、わかるように書いてくださっているんです。誰にでもわかりやすく説明できるってすごい。憧れちゃう。

脳科学はフロンティア?

脳の研究は、物理学とか数学とかといった他の分野と比べると、まだまだ未発展と言わざるを得ない分野なんだそうです。ニュートンが万有引力の法則を発見したような、アインシュタインが相対性理論を生み出したような、そういうブレイクスルーが起きていないんですって。
(私の理解した範囲で)ざっくりいうと、記憶というのは脳内の細胞(ニューロンとシナプス)の繋がり方。繋がり方の組み合わせによって、それが赤いセーターだったとか、運動会の思い出とかいう記憶になります。でも、細胞がつながってそこに電流が流れているからといって、どうしてそれが「赤いセーター」や「運動会」という事象を表現できるのかがわかっていません。細胞同士がつながるタンパク質の仕組みとか、新しい細胞が生み出される仕組みとかはわかっていても、最も基本的な原理がわかっていないのです。いつかブレイクスルーしてくれる天才の出現待ち。なんかワクワクしますね。

大人になっても脳は成長する?

昔よく聞いた「大人になると新しい脳細胞は生まれない」という誤解が生まれた原因と、それを否定する最近の研究の話も載っています。大人になっても大丈夫!新しい脳細胞は生まれます!青魚を食べよう!DHAを摂ろう!
また科学を通じたトラウマの忘れ方、PTSDの直し方(のアイディア)にも言及されていますので、興味のある方はどうぞ。

実験エグい、エグいよ実験

研究者の知り合いがいるわけでなく、マウスを使った実験といっても全然イメージが湧きません。が、本書ではそういう部分にもサラリと触れてあります。脳細胞をxxxして、直接脳にグラスファイバーを通してxxxみたいな。研究者の方には当たり前なんでしょうけど、やっぱり生き物を使った実験って怖いですね。サイバーでマッドでサイエンティストですね。もちろん人類に必要なのは間違いないですから、否定する気は全くありませんが…怖ッ!

記憶とか人格だって、原子の運動なんだぜ?

当たり前ですが、人間の記憶とか、今これを書いている私の意識だって、突き詰めてみれば脳の中の細胞がアレしてコレして動いているだけの話なんですよね。本書を読んでいると、人間の脳って本当によくできたコンピュータなんだなぁ…と不思議な気持ちになれます。誰もが持っているのに、その動作原理が未だに不明のスーパーコンピュータ。その不思議さを確かめるのに、ちょっと読んでみると楽しい1冊です。