【読書感想文】幽霊人命救助隊 著:高野和明を読みました。

幽霊人命救助隊 (文春文庫)
幽霊人命救助隊 著:高野和明

幽霊の4人組が、自殺しそうな人を100人助ける話。

あらすじ

自ら生命を絶ってしまったことで、天国にいけなくなった4人の男女。

彼らは神様から、「49日以内に100人の自殺志願者を助ける」ことで、天国行きを許すと告げられる。

幽霊である彼らは、「他人から見えない」「話しかけても聞こえない」「壁をすり抜けたりできない(意外)」という厳しい条件の中、100人の人命救助に奔走する。

という感じ。

自殺という重いテーマを中心に扱っていますが、わかりやすく、楽しく読めるエンターテイメント系の小説です。

人から見えない、触れない幽霊達がどうやって人命救助するのん?というところは割とキモのような気がするので、こんなところで解説はしないでおきますね。

王様のブランチの映画コーナー、あらすじを通り越して映画の98%ぐらいはストーリーを紹介しちゃいますよね。あれはどうなんでしょうね。

好きですけどね。ブランチ。

幽霊人命救助隊の面白かったところ

100人も自殺しそうな人を救助するわけですから、とにかく色々なパターンの自殺志願者が登場します。
※ もちろん、途中ダイジェストでお送りする部分があるので、100人全員が作品に登場するわけではないですが。

いじめ、借金苦、うつ病、孤独、不治の病、ヤクザの親分、その他もろもろ…

それぞれの人が死にたい理由を見ていくにつれ、

「こんなつまらんことで死のうとするのか」から

「いやもうこれ死ぬしかないじゃん仕方ないわ」

まで、ひと通りの自殺したくなりそうなパターンが登場します。

4人の救助隊は、新しい自殺志願者に遭遇するたびにオタオタしたりバタバタしながら、なんとか「とりあえず死なない」方向に持っていくように奔走します。

救助の方法は千差万別ですが、基本的には専門家に相談しろ、っていうわかりやすい方法が主流。

精神の問題は、精神科医に。(ヤブ医者に注意して)
お金の問題は、弁護士や専門機関に(ヤブ弁護士に注意して)

たぶん、問題の当事者になってみるとなぜか頭をよぎらない「プロに助けてもらう」「行政のサービスに乗っかる」という方法がメインになっており、大変現実的というか、もしもの事態に思い出したい内容となっております。

もちろんそれ以外にも、いじめ問題(子供の自殺)や終末医療の話も出てきて、それぞれに救助隊は右往左往しながら対応していきます。

こういう微妙な問題も、100人の救助の中のいちエピソードとして解決されていきます。ので、読んだ方の中には「そんなに簡単な問題じゃねーんだよ!」とキレられる方が大いにいそうですが、そこはそれ100人も救助する物語なのですからあまり深く突っ込まなくていいんじゃないでしょうか。

いじめられてる小学生がいじめっこにxxxしてxxxしちゃってもいいじゃないですか。

幽霊人命救助隊の注意したいところ

先にも書きましたが、なにせ100人も要救助者が出てくるので、とにかく「そんなに簡単な問題じゃねーんだよ!」と思われる方はいらっしゃると思います。

また、「どんな人でも、どんな事情でもとりあえず自殺を防ぐ」という氏名のもとに救助隊は動いていきますので、うーん、この人は死なせてあげてもいいんじゃないかな?と思われる方もいらっしゃるでしょう。

その辺は死生観もいろいろあると思うので何とも言いづらいところですが、救助隊のメンバーももちろん「本当に助けていいのか?」と葛藤しながら助けていくので、あまり気にしないで読んでもらったほうがいいのかも。

あと神様が出てきますが、どこの宗教の神様かはさっぱりわかりません。そこら辺はあえて濁して「ちょっと変わった人」ぐらいに書いてあるので、神様ラブ、自分の信じる神様以外は信じないぜガッデムジーザスな方はご注意ください。この作品は大半の日本人がそうであるように、あいまいな宗教感の方向けに書かれている…というか、あまり深くつっこまないように書いてあります。

幽霊人命救助隊まとめ

単純にエンターテイメント小説として、とても楽しい仕上がりです。
4人の個性あふれる救助隊のてんやわんやなやりとり、救助をしていく中で生まれるチームワークなど、まるで青春小説を読んでいくノリです。
※メンバーに元ヤクザがいるので青春小説感はないかも。

深く考えずに読み始めても十分に楽しく、感じるところがたくさんある作品なのでとりあえず興味をひかれた方は読んでみるといいと思います。

人間、誰がいつ自殺したくなるのかわかりません。

自分がそうかもしれないし、家族や友だちがそうなるかもしれません。

楽しく読める自殺防止本として、ちょっと読んでみてはいかがでしょうか。