組織をダメにするマニュアルでダメになった組織にいました

CIAの「組織をダメにするマニュアル」が話題。内容が日本企業の体制そのもの!?

これを読んで、サラリーマン時代のことを思い出してました。

ブラックで楽しい職場

私が新卒で入社した会社はあまり大きくないところでした。

入社した当初は、良くも悪くも自由な感じの社風。ルールは曖昧で、社員の一人ひとりの努力で無理やり業務を回してるような会社でした。

私が配属されたシステム部門はいつも緊急の案件やシステムの障害対応に追われていて、端から見たらブラックそのもの。徹夜なんて日常茶飯事だし、基本給はやたら安いし(残業代前提の給与体系に違いない)、データセンターに缶詰で何日も太陽を拝めない日が続くこともありました。あと連休はシステムを止められる数少ないチャンスなので、基本的にいつも徹夜作業でした。マジで嫌だった。

でも楽しかった。

何か問題が起きても現場の判断で即対応するのが許されていたし、みんな「寝てないわー全然寝てないわー」ってミサワ丸出しながらも「この案件は俺がなんとかしてやるぜぇー」っていう気持ちを持って仕事をしていました。

先輩も相当に厳しくて、「ワードがエクセルがーパソコンがー」とか言ってる大学出たての私に「メールサーバーのセットアップしといて、これ仕様。必要なら経費で参考書買ってこい」といってそのまま何日も姿を消すような人でした。配属初日にあれはひどかった。「めえる・・・さぁ・・・ばぁ?」ってなった。懐かしい。

ホワイトでつまらない職場

そんな会社が変わったのは、某日本を代表する大企業に買収されてから。

あっという間に仕事がルール漬けになりました。

ありとあらゆる決定や作業に「事前に書類を書く」か、「決められた会議で承認を受ける」ことが必要になりました。今まで現場で勝手にやってた5秒で終わるシステムの設定変更に1週間かけて承認を得る必要ができました。1週間で終わる案件に、2か月かけて5〜6回の会議を行うようになりました。その度に大人数のスケジュールを調整して集まらなければいけないので、会議のために作業を進められないことが増えました。

残業は月の初めに決められた時間しかできなくなりました。決められた時間より多くても少なくても、後でその理由を説明する書類を出さなくてはならなくなりました。

またそんなに時間にカチカチなので、予め予定されたこと以外の業務ができなくなりました。これの意味することはつまり「緊急の案件」「トラブル」「困ってる同僚の手伝い」ができなくなりました。また時間が自由に使えないので、会社の機材を使った技術的な検証や勉強もできなくなりました。新人の頃は余ってるサーバーやネットワーク機器で夜な夜な実験が出来たりしたのですが、そうやって新人を育てることも、新人が勝手に育つこともなくなりました。

システムを構築する作業より、ワードやエクセル、そしてパワーポイントの資料作りをする時間が増えました。っていうか辞める直前はほとんどパワーポイントしか触ってなかった。

自分がその日に何に時間を使ったのかを事細かに記録しなければいけないので、ただでさえ少なくなった業務時間を謎の管理業務に費やすようになりました。

「お客さんのためにきっちり仕事をこなせ!時間は気にするな!」と言っていた上司がいなくなり、「いかに出張報告を1枚の紙にまとめて、罫線の縦横をきっちり合わせたか」という話を力説する上司が代わりに親会社からやってきました。

ズルズルとスケジュールは遅延し、でも残業も禁止なのでみんな時間になれば帰ります。責任感ってなに?おいしいの?

まぁ私はクソ面倒なルールを守ったりムカつく上司をスルーするのは得意なので、それだけなら別に我慢したのですが、ついに我慢できない事態になりました。

スキルの高い先輩がみんな退職してしまったのです。

4年目にして部署のエース扱いになりました。でっちあげ書類を作るのとつまらない会議を無難にこなすのは得意だったので、そういうところが評価されたんだと思います。昔から口だけは達者です。ペロペロ。

細かいことは色々我慢できますが、目標にできる人がいないのに我慢して仕事を続ける理由がありません。気がつけば入社から5年も経っていたし、もう十分だと思いました。

その後は家族の応援や尊敬する人からの「ユー、独立しちゃいなよ!」という助言もあり、速やかに退職して個人事業としてセレクトショップじぃーまを始め、合同会社ズィーマになり、今に至るというわけです。

今もあの会社では、みんなが意味ねぇと確信している謎の会議をせっせと開き、5秒の作業に1週間かけて書類を作ってるのでしょうか。今もあそこにいたら、自分はどんな人間になってたでしょうか。少なくともこのブログは書いてないですね。だから今これをあなたに読んで貰っているだけでも、独立した意味があったというものです。

まぁ何が言いたいかというと、もし独立しないであの会社にい続けたら、きっと今も「もっと若かったら独立したのになぁー」とか後悔しながらわけわからん書類を書いてたんだろうってことです。独立とか死ぬほど大変ですけどね。今も死にそうです。ゲフゥ。

じぃーまでした。